浦安音楽ホール

J:COM浦安音楽ホールは、生音の響きを重視し、クラシックを中心とした
音楽を楽しむことができる本格的なコンサートホールです。

おとマルシェVol.19 種谷典子(ソプラノ)スペシャル・インタビュー

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おとマルシェVol.19 種谷典子(ソプラノ)

J:COM浦安音楽ホールが注目の若き音楽家たちにフィーチャーする公演、しんうらやす おとマルシェ・シリーズ。Vol.19の10月5日(木)には、種谷典子さん(ソプラノ)が登場します。

 

 

プログラムについて

――この度の「しんうらやすおとマルシェ」のプログラム構成についてお聞かせください。

種谷:華やかな雰囲気のオペラアリアも勿論お楽しみいただきたいのですが、音響の素晴らしい会場で是非やってみたいなと思っていた、祈りや、切々と愛を歌う美しい歌曲を多くプログラムに組み込みました。例えば残響の少ない場所や余りにも大き過ぎる会場では、曲の細やかな部分までお客様に届くよう気を配ることが物理的に難しい事もありますが、J:COM浦安音楽ホールの豊かな響きによって、作品の持つ美しさがより洗練されたものになるのではないかと楽しみにしております。

――本公演では、日本歌曲、レクイエム、古典歌曲からオペラまで幅広いジャンルの構成となっていますが、種谷さんご自身で一番の思い入れのある曲、お薦め曲はどの曲ですか。又、お薦めの理由などをお聞かせ願えますでしょうか。

種谷:どの曲もそれぞれに素晴らしい面があるのですが、私自身が広島出身と言うこともあり、長崎で御家族が被曝をされた永井隆氏による作詞の「南天の花」は、歌うほどにその痛みや苦しみを深く感じています。私の母方の祖母は原爆投下の当時、広島県の北部に疎開しておりました。直接の被害は受けなかったものの原爆手帳を持っていて、祖母が亡くなった翌年には遺族として夏の平和式典に招かれた事もあります。そういった経緯もあり、普段演奏する上ではあまりそうは思わないのですが、この曲に関しては私が歌う意味があるかもな…と思ったのです。今後も大切に歌っていきたい曲です。

 

オペラ『椿姫」

――近日公演のオペラ『椿姫』でヴィオレッタ役をされる種谷さんですが、ヴィオレッタ役を演じられる上で、ヴィオレッタはどの様な女性だと思われますか。また、どの様な点に重きを置いていらっしゃいますか。是非伺わせて下さい。

種谷:この度初めて演じるヴィオレッタは品格ある佇まいと華やかな容姿、教養を兼ね備え、ドゥミ・モンドと呼ばれる社交界の花形として生きています。なのでこれまで演じて来たスザンナやパパゲーナのように軽やかに立ち回る小間使いや娘役とは違い、立ち居振る舞いが優雅で美しくなければならない事は、私にとって第一の関門といいますか…挑戦でもあります。

ヴィオレッタがどのような女性か、というのを言葉にするのが難しいのですが、ある役柄の人物像を知ろうとする時、その役に関わる周りの人間が相手をどう見ているかを汲み取る事によって明らかになります。原作に書かれていることの全てがオペラに反映されているわけではありませんが、例えば原作中では子爵がヴィオレッタの事を「あんな身分の女に気を遣う事などないのだから」と話している場面があるのですが、それは子爵個人の心情ではなく娼婦ヴィオレッタに抱く世間一般の意見なのだと思います。劇中ではそのような態度をアルフレードの父親であるジェルモンが示しています。またアルフレードと二人で暮らし始めた先で、最終的にはオペラでも原作でもヴィオレッタが身の回りのものを売って費用を捻出していますが、パトロンの男性と縁を切るまではその住まいを借りる援助を受けていたこと等はオペラの中ではあまり詳しく触れられていません。そういう方法でしか生きていけなかったこれまでと決別する覚悟を持ったヴィオレッタの、一度も感じたことのなかった真実の愛を信じ未来を生きようとする熱い想いも、そして消えぬ過去と自らの病の進行とともに失意に沈んでゆく様も並の感情では表現しきれない、本当に難しいと痛感しています。

ただどの役を演じる上でも、楽譜や音楽に対し誠実に、丁寧に演奏する事を心掛けています。それが何よりも難しいのですが…役作りの着想も音楽、楽譜から得るものがとても大きいと思うので、モデルとなる人物像や置かれた状況などと照らし合わせ、自分の声の都合だけで歌わないよう、やみくもに自分のオリジナル像を追わないようにしています。ヒントは全て楽譜にある
と思っています。

種谷典子さん出演のオペラ『椿姫』公演情報はこちらから!

 

オペラ歌手を目指したのは

――オペラ歌手を目指すきっかけとなったエピソード、また、これまでご苦労されたこと、嬉しかったことなどがあればお聞かせください。

種谷:母が地元の音大の声楽科出身で、児童合唱団の指導者をしていました。幼い頃から母について行くうちにいつのまにか入団していて…歌との関わりが始まったのは3歳頃からです。その後も中・高と合唱部に所属し、音大進学を目指したのも私の中では自然な流れでした。慣れない土地に住む事は少なからず大変なこともありました。特にイタリアに住んでいた時は寝ても覚めても歌のことを考えていて、声と向き合う時間が充分にあった事は幸せでしたがその分追い詰められて涙する事も多かったです。10キロ近い楽譜の入ったリュックを背負ってミラノからスイスのルガーノまで国境を越えてレッスンに通い、帰り道は重い身体を引きずり車窓から見える湖をボーッと眺めて…その日々で度胸はついたと思います。だからこそ、時間はかかっていると思いますが先生とともに目指してきた音楽や声が見えてきた時は、何倍も嬉しく感じます。

 

ピアニスト、齋藤亜都沙さんについて

――種谷さんとピアニストの齋藤さんは同じ大学ご出身ですが、お二人の出会いについてや、日頃の練習時のご様子、お互いがどのような事を大切にされているのかなどについてお聞かせ願えればと
思います。

種谷:齋藤さんは1学年後輩なのですが、初めての共演の機会は大学卒業後の皇居での演奏会でした。またとない特別な空間での演奏、本当に必死だったと記憶していますが、今でも心に残っている素晴らしい経験です。その後私が留学を終えた頃から、リサイタルなど共演の機会が増えていったと思います。

齋藤さんもまたソリストとして研鑽を積んでおられますので、彼女の見る音楽の世界観を知りたいと純粋に思って、音を生み出す起点や進む方向性などを尋ねた事があります。とても抽象的な話ではあるのですが、楽譜は表面的な所だけでなく、細部に渡って神経を行き届かせる必要があると再認識し、その後は曲の解釈について話し合う事も自然と増え、呼吸や言葉の持つ”温度感”をも共有出来るようになったのは本当に嬉しく…かけがえのないパートナーです。

 

種谷典子さんとの出会い(齋藤亜都沙さんへのインタビュー)

――種谷さんとピアニストの齋藤さんは同じ大学ご出身ですが、お二人の出会いについてや、日頃の練習時のご様子、お互いがどのような事を大切にされているのかなどについてお聞かせ願えればと思います。

齋藤:種谷さんは国立音楽大学時代の1学年上の先輩です。学生時代から圧倒的な存在感を放ち憧れる存在でしたが、初めて共演したのは2012年の3月に宮内庁主催皇居桃華楽堂で行われた御前演奏会の時でした。種谷さんはこの演奏会の2011年度出演者として選出されていましたが、東日本大震災の影響で中止となり、翌年に私の代とのコラボという形で共演機会を得ました。以来多くの公演で共演を重ね信頼関係を築いてきましたが、昨年の日本音楽コンクール歌曲部門への挑戦に際しては非常に濃密な時を共有しました。種谷さんは驚くほどの体力と精神力、そして集中力をお持ちで、声楽家とのリハーサルとは思えない脅威の4時間ノンストップ練習を週に2〜3回重ねていました。とにかく楽譜を何度も読み込み様々なアプローチで試行錯誤を重ね、最終的には全てを忘れてその時感じた音楽にただ身を委ねて奏でていく。種谷さんの音楽に対する姿勢からは作品に対するリスペクトが感じられ、アンサンブルを共にできる事がとても幸せです。

――声楽家との共演の際にお気を付けていらっしゃる事などがあればお聞かせください。

齋藤:呼吸を感じ合わせることは勿論ですが、音と音の間を良く聴くこと、ビブラートに耳を傾けて音が交わった時の響きを良く聴くことを心がけています。また、声は特にメンタルと直結する楽器なので、ネガティブな事やマイナスワードを発しない事を無意識に気をつけているかもしれません。

――ピアノ伴奏をされていらっしゃる齋藤さんからご覧になった歌い手種谷さんの歌声の魅力などについてお聞かせください。

齋藤:種谷さんは芯が強く、オペラを歌う時はまるで女優のようです。キャラクターを演じ分け、確固たる意志と心に迫る表現力が魅力だと思います。歌曲も様々な国の異なる言語によるレパートリーを歌われていますが、いつも詩を大切に、自身の経験や心情も重ねながら内容を色濃く伝えていく歌に魅力を感じています。声という面では特に、広く響きの良い会場で聴く美しいピアニッシモも大好きです。

 

ホールでお会いする皆さんへ

――最後に、J:COM浦安音楽ホールのお客様へのメッセージを是非お願い致します。

種谷:皆様にとってお忙しい平日お昼の貴重な一時間ですが、お楽しみいただけますよう美しい作品の数々を心を込めて演奏したいと思っております。また当日はMCを交え、曲の解説は勿論のこと、その曲との関わりや出会いなどもお話出来たらと考えております。J:COM浦安音楽ホールで皆様にお会い出来
ますことを心から楽しみにしております!

 


しんうらやすおとマルシェ Vol.19 種谷典子(ソプラノ)

日時 2023年10月5日(木)
   14:00開演(13:30開場)
   
会場 J:COM浦安音楽ホール コンサートホール
料金 【全席指定】友の会会員2,300円 一般2,500円 
   演奏曲目などはこちらをご覧ください>>公演詳細ページ

  <お電話でのご予約>
  J:COM浦安音楽ホール 047-382-3035(受付時間 9:00~21:00 第二・第四火曜日は休館)