MOZART SINGERS JAPAN 主催
J:COM浦安音楽ホール 共催
オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』
Opera Cosi Fan Tutte
今夏、J:COM浦安音楽ホールで(共催事業)初の試みとなる本格的なオペラ公演!
300席の小さなホールでオペラ公演なんてできるのかしら⁉
MOZART SINGERS JAPANとタッグを組み、未知なる可能性に挑戦します!
今回は演出・構成を担当する宮本益光氏のインタビューをお届けします。
Q1)
そもそも、MORZART SINGERS JAPAN設立のきっかけや経緯はどんなことだったのでしょうか。モーツァルトのオペラ全作品のレコーディングを目標に掲げていらっしゃいますが、そのほかにもこのオペラ・グループを通じてどんなことを実現していきたいのか、あらためて教えてください。
(宮本)
声楽家の学習過程において、モーツァルト作品に触れない人はほとんどいないでしょう(特に日本では)。私も数多くのモーツァルト作品を歌い、そして今では指導者としてモーツァルト作品を取り上げることも増えてきました。
私たちの基礎になっているとも言えるモーツァルト作品を、同世代の仲間たちとさらに探求したい…そんな思いでMOZART SINGERS JAPANを創りました。
ヨーロッパのように各地に劇場がなく、恒常的にオペラが上演されていない日本において、オペラ歌手がレパートリーを持つことは容易ではありません。必死に何か月もかけて準備しても本番がたったの一回、そして次に演じるのは何年後か分からない…これが日本の現実です。
そこで依頼があれば翌日でも舞台にのせられるようなレパートリーを持てたら、そのためにいつもモーツァルト作品が歌い合える仲間がいたら…MOZART SINGERS JAPANとはそんな思いを共有し、その実現に向けて意思を高め合う集まりでもあるのです。
Q2)
アイディアマンの宮本さんですが、今回は演出・構成を担当されます。演出のときに一番大切にしていることはどんなことですか。またこのホールでの上演にあたり、数あるモーツァルトのオペラ作品の中でも、なぜ『コジ・ファン・トゥッテ』を選ばれたのでしょうか。オペラ初心者のお客さまもお見えかと思いますので、このオペラの魅力もお聞かせください。
(宮本)
大切にしていることは、ただひたすらに作品をリスペクトすること。仮に台本作家や作曲家が観に来たとしても、決してうしろめたい思いにならない舞台を創ることです。演出のために作品があるのではなく、作品のために演出しなくてはなりません。
コジ・ファン・トゥッテはアンサンブル・オペラの側面を持っています。一人で歌うアリア(見せ場)の数より、複数人で歌うアンサンブル・ナンバーの方が多く、これはモーツァルトの時代から考えると特異なことです。
今回オーディションで選ばれた若い歌手の皆さんは、まさにこれから旬を迎える、能力の高い人たちばかりですが、今回のように長い稽古を経て一つの作品を作り上げるとき、このアンサンブルの要素がきっとそれぞれの絆を深め、個々を引き上げ合うことにつながるだろうと考えたからです。
Q3)
300席のホールではフルオーケストラが伴奏できないなど、様々な制約があるのも事実です。
この音楽ホールも、(共催事業として)このように本格的にオペラ公演を開催するのは初めてなので、ホールとしてもチャレンジになります。小ホールでオペラを上演することの意義やメリットについてどのようにお考えですか。親密な空間のなかでのオペラの味わい方、楽しみ方があるとすれば、お客さまはどんなふうに鑑賞するとよいと思われますか。
(宮本)
声楽の魅力は、誰もが発することのできる声を極限まで磨き、楽器とし、それを持って音楽空間を造形することにあります。小ホール…とは言っても、決して狭くはありませんが、その空間を一人の人間が、豊かな響きで満たし、汗を流しながら、心抉るような演唱をするのです。お客様はそれを間近に接し、人間の可能性に驚かれることでしょう。
物語の予習がなくても楽しめるように構成していますが、粗筋を理解してご覧いただくと感動はさらに増すでしょう。
小ホールという空間は、私にとって制限ではなく、額縁の種類にすぎません。むしろその額縁からこぼれる出ること必至のモーツァルトの音楽は、小ホールだからこその躍動を持って皆様に届くことでしょう。
Q4)
今回は出演者をオーディションされました。若い世代のみなさんを多くお見受けします。難しいかもしれませんが、ひと言でいって、どのような方たちなのでしょうか。質問の趣旨が重なるかもしれませんが、オーディションの趣旨や基準はどんなことだったのでしょうか。ご出演者に期待していることを教えてください。
(宮本)
大勢の若き声楽家の方が受けて下さり、心より感動いたしました。オーディションの趣旨は、MOZART SINGERS JAPANの仲間を増やしたいこと、それも若い世代に、です。
それぞれに既に立派な経歴をお持ちの方々ですが、経歴は歌ってくれませんからね、しっかり演奏していただき、私たちの創りたい舞台に相応しいと思われる方を選出いたしました。
今回の演出プランは、すでにMOZART SINGERS JAPANで持っているレパートリーを用いる予定ですが、演奏者が変われば作品が違った色に染まるように、私たちの創ってきた舞台を、大きくアップデートするような公演になってくれたら幸せです。
Q5)
オペラ初心者だと、どちらの日を聴けばよいのか、正直迷ってしまうかもしれません。
26日と27日のグループで違いはあるのでしょうか。演出は、その違いがあるようにされるのですか。日本のオペラ団体による公演は、ふたつのグループが1日おきに演奏することが多いようです。両方聴ければ一番いいのですが、時間もお金も十分にない場合、どちらを鑑賞するとよいのでしょうか。
(宮本)
迷った方は両日、見比べ、聴き比べを!!
両日とも基本的には同じ演出ですが、人が変われば当然変化が生じるでしょうし、それも楽しみの一つだと考えています。
これから出演者のメッセージなども掲載されるでしょうし、インターネットで情報を検索することもできるでしょう。迷った方はぜひお目当ての歌手、応援したい歌手を見つけ、その方を目当てにご来場ください。
今回の初日組、最終日組に優劣の差はありませんが、お互いがお互いを意識しないということはありません。だからやっぱり両組をご覧いただき、応援してあげてください!!
Q6)
宮本さんは、オペラ・デビューがモーツァルトでした。その後、東京二期会でのデビューも、宮本亜門さん演出のモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』の主役でした。「宮本益光さんといえばモーツァルト」ですが、デビュー以降もモーツァルト作品の上演にこだわり続ける理由はどんなところにあるのでしょうか。そして、作曲家・音楽家としてだけではなく、モーツァルトってどんな人だったのかと宮本さんは想像しますか。
(宮本)
自分の声や能力に合っている…と言うとおこがましい気もしますが、自分を高め、導いてくれた作曲家がモーツァルトだと信じています。
モーツァルトはあの時代、人生のほとんどが旅の繰り返しでした。何か国語も話し、それぞれの国の音楽に触れました。そのせいでしょう、彼の作品に国民性を見出すことは難しく、時代の様式の枠をも飛び越えてきます。
モーツァルトの音楽は、モーツァルトだけの音楽で、それは人種、宗教観、あらゆる価値観を超越した、人の所以に即していると思うのです。
モーツァルトに会えたらそんな話をしてみたいのですが、本当に会えたら下品な冗談を言い合いたい欲を抑える自信がありません!
最後に、J:COM浦安音楽ホールのお客様へのメッセージを是非お願いします。
(宮本)
「オペラ」と聞くと「難しそう…」と思われる方も多いと思いますが、舞台上で繰り広げられるのは「歌のお芝居」です。
とびっきりの声を持って懸命に演じる若者たちが、国内最高峰の音響を誇る音楽ホールで200年も昔の世界的な名作を上演し、歓喜の世界を造形する…そんな劇場の奇跡を、ぜひ目撃していただけたら幸いです。
藝術を生活に携えるという真の贅沢を、音楽ホールは叶えてくれる場所です。私たちの演目が皆様の喜びとなることを願っています。
8月26日(土)の公演はこちら
8月27日(日)の公演はこちら